アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は「よくなったり、悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹がでる病気」で、 生後2~3ケ月頃に顔から始まり、徐々に躯幹、四肢に広がり、肘・膝の内側などに治りにくい湿疹が左右対称に生じて、慢性に続くものです。

 
 
10歳以上になると自然に軽くなり、ほとんど治ってしまう人も多いのですが、最近、大人になっても顔や上半身の湿疹がなかなかよくならない人も増えてきました。

原因

原因は、まだ完全には明らかではありませんが、遺伝性に皮膚の乾燥とバリアー機能の低下があり、アレルギーを起こしやすいアトピー素因を持つ人に、汗やほこりの刺激、食事やダニのアレルギー、精神的・肉体的ストレスが悪化因子となって生じると考えられます。

アトピー素因とは、家族や本人が気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などにかかったことがあるとか、食事やダニなどに対してアレルギー反応を示しやすい体質のことです。

年齢による変化

スキンケアと日常生活

アトピー素因を持った人でも、スキンケアをしっかり続けていれば、皮膚の乾燥が軽減し、バリア機能を回復させることができます。
スキンケアとは、皮膚に不足している脂分を、皮膚の外側に塗ることによって補うことをいいます。 保湿剤を効果的に使うことです。
スキンケアの基本は、きれいにして、そして、しっとりです。

日常生活でのセルフコントロール

1  汗や汚れは、すぐに洗い落しましょう。

2  せっけんをよく泡たてて、洗うときはやさしく。

3  お風呂の後は、保湿剤でうるおいを。

4  肌ざわりのよいやわらかい衣類を選びましょう。

5  ストレスは大敵。リラックスできることをみつけましょう。

6  ひっかきキズをつくらないように、爪をきちんと切りましょう。

7  こまめに部屋のお掃除をしましょう。

8  つらいかゆみを抑える方法を知って、掻かないようにガマン、ガマン。過度の暖房、乾燥、飲酒、長時間の入浴は体がほてるのでかゆくなります。かゆいときは、幹部を冷やしましょう。


治療

抗ヒスタミン剤で、かゆみをコントロールし、ステロイド外用剤で皮膚の炎症をコントロールします。
今のところ、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に早く抑えるには、ステロイド外用剤に勝るものはありません。
更に、保湿剤や免疫調整外用剤等も一緒に使い分けて使用します。
成人重症アトピー性皮膚炎に対しては、ナローバンドUVBの中波長紫外線療法や、炎症を抑える作用のある免疫抑制剤シクロスポリンの内服療法が効果を上げています。
アトピー性皮膚炎の治療は、あせらず気長に症状をコントロールしながら、かゆみ・湿疹を意識しない普通の生活が送れることを治療目標としています。

外用ステロイドの恐怖症にならないように

マスコミや一部の医師による無責任なステロイド批判により、ステロイド外用剤は恐い薬という誤解が生まれてしまったのは、とても残念なことです。
ステロイド外用剤は、そのすぐれた薬理作用から、今日のアトピー治療にはなくてはならない薬です。その作用は強いものから弱いものまで5段階あり、症状、使用部位、使用期間、使用量により、薬の効果がみな異なります。
良い薬ほど、使い方が難しいものです。指示通り正しく使うよう心がけていれば恐くありません。
「ステロイドの塗り薬は使いたくない」とおっしゃる患者様には、非ステロイド系消炎外用剤の説明をしていますが、炎症を抑える力は極めて弱く、かぶれを生じることがまれではなく、使用場面は少ない塗り薬です。
また、よく聞かれる不安の一つに「ステロイド外用薬で色が黒くなる」「ステロイド外用後に日光に当たると黒くなる」という誤解があります。
日焼け後に肌が黒くなるように、皮膚の炎症が治まった後に色素が残り、肌が黒くなることがあります。
炎症後の色素沈着は自然のことで、炎症を治めたステロイドのせいではありません。
その色素も時間とともに薄くなっていきます。このような事例は「火事が起こって消防士が水をかけたから焼け跡が真っ黒になった」と同じです。焼け跡は、火で焼けたから黒くなったわけで、消防士が水をかけたから黒くなったわけではありません。